研究内容
エピゲノムから生命システムの成り立ちと多様化のしくみに迫る
DNAメチル化やヒストン修飾などの「エピゲノム」情報は、遺伝子の発現制御や染色体の制御を通して細胞や個体の個性を決めている重要な遺伝情報です。 興味深いことに、エピゲノム情報は細胞内外の環境に応答してダイナミックに変化することもわかっています。 つまり、生命の設計図自体がダイナミックに変化するのです。 私たちの研究室では主に植物を用いて、エピゲノム情報がいかに形成されて、継承されるか、 また環境に応答して変化しているのかを明らかにすることを目指しています。 特に、ゲノム全体におけるエピゲノム情報を一気に取得する「エピゲノミクス解析」を主軸とし、 ウェット(実験)とドライ(コンピュータ解析)の両輪を使いこなすことによって、 エピゲノム制御の謎に迫ります。 また環境変動時のエピゲノムのダイナミクスを解析することで、 いかに生物がエピゲノムを利用して周囲の環境に適応しているのか、その生存戦略に迫ります。
主な研究テーマ
1. エピゲノムのパターン形成と継承のしくみの解明
DNAメチル化やヒストン修飾などのエピゲノム修飾が、ゲノム中のどこにどれくらい存在するかは、細胞や個体によって異なり、また細胞内外の状況によって変化することが知られています。 エピゲノム修飾は、修飾を書き込む「ライター」、消去する「イレイサー」、修飾に結合して情報を読み取る「リーダー」という大別して3種類のタンパク質によって制御されています。 私たちは、これらのたんぱく質がどのように働いて、ゲノム全体のエピゲノムパターンが形成され、細胞分裂や個体の生殖過程を通じて継承されているのかを明らかにするべく、 遺伝学、生化学、ゲノミクス、情報学などの手法を用いて研究しています。 これまでに、修飾と修飾の間の相互作用が織りなすネットワークがエピゲノムのパターン形成と継承に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきており、 ネットワーク中の個々の相互作用を司るタンパク質の働きをさらに明らかにすることを目指しています。
2. 発生や環境応答におけるエピゲノムの役割の解明
植物のもつ高い適応能力がどのような分子機構で成り立っているのかに興味を持って研究しています。 植物は絶えず変化する周囲の環境に合わせて、生理機能だけはなく、発生もダイナミックに変化させて、環境に適応しています。 私たちは、エピゲノム制御の観点から、植物の環境適応能力の分子機構を紐解く研究を進めています。 特に、植物が過去の環境変化を「記憶」し、次にくる環境変化により迅速に応答するという記憶現象に興味を持ち、研究しています。 私たちのこれまでの研究で、遺伝子の転写をエピゲノム修飾という形で「記録」するしくみの存在を見出してきました。 この記録のしくみが植物の適応能力にどのように役立っているのか、そしてそのしくみを人工的に書き換えることで植物の適応能力がより高まるのかを明らかにしたいと考えています。
3. エピゲノム多様化のしくみの理解
地球上に存在する生物の中で、シロイヌナズナという一つの種をとってみても、多種多様な個体や系統が存在していて、それぞれ多様な形質をもっています。 その背景には進化の過程で蓄積したゲノム配列の違いに加えて、DNAメチル化などのエピゲノム修飾のパターンも多様化していることが知られています。 私たちはこのエピゲノムパターンの多様化がどのようにもたらされるか、そのしくみを理解したいと考えています。 これまでの研究からエピゲノムパターンを形成するための修飾間ネットワークを明らかにしてきましたが、それをさらに発展させて、エピゲノムパターンが多様化する原理を紐解いていきます。